自然災害やサイバー攻撃の脅威が増す中、現状のバックアップ体制の強化や改革に対する関心が高まっている。保護すべきシステムの重要性、コスト、運用負荷のバランスを考え、クラウドサービスを活用した「コスパの良い」データ保護を始めるにはどうすればいいのか。事業継続性を高める、現実的なバックアップ体制の手法を探る。
自然災害やサイバー攻撃への備えとして、ストレージのバックアップは定期的に見直すべき課題だ。
東日本大震災以降、クラウドストレージを活用したバックアップが普及したことから分かるように、データとシステムを各所に分散させてリスクを最小化し、素早く復旧する方法に関心が集まっている。サイバー攻撃についても、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃への対処は経営層が特に意識する課題になっており、社内ネットワークへの侵入を防ぐだけでなく、侵入されることを前提にしたアプローチが求められている。
一方で、バックアップは常に「過剰投資になっていないか」と厳しい目を向けられがちでもある。費用と手間を抑えつつ、適切なバックアップを用意するには新しい工夫が必要だ。どうすればいいのか。
バックアップ体制をあらためて見直すべき背景事情として、エフサステクノロジーズの川田 大氏(サーバ&ストレージ事業本部 ストレージ事業部)は、BCP(事業継続計画)やDR(災害復旧)の施策に関する政府方針を挙げる。
「内閣府の防災担当が2023年に『事業継続ガイドライン』を改定し、テレワークの導入やオンラインを活用した意思決定の仕組みの整備、情報セキュリティ強化などが事業継続に必要だと明示しています。企業の間でも、2024年に発生した能登半島地震や、南海トラフ地震臨時情報の呼びかけなどを受けて、災害対策の基本中の基本であるバックアップに対する意識を高めています」
ランサムウェア被害の激化も無視できない状況だ。川田氏はこう説明する。「警察庁の広報資料が繰り返し示すように、バックアップからの復元ができなかったケースは多いです。その理由はバックアップデータそのものが暗号化されていたためだと説明しています。だからこそ、確実にデータを守る手法の必要性が、ユーザー企業の間であらためて認識されるようになっています」
これらの事情から、データ保護製品は年々さらなる市場拡大が予測されている。しかしITコスト削減を厳しく問われる中では、バックアップの強化や改善に伴う費用と運用負荷を抑えながら、どのように現実的な対策を講じるかが鍵になる。エフサステクノロジーズの金岡智洋氏(サーバ&ストレージ事業本部 ストレージ事業部)は、バックアップの基本について、こう説明する。
「3個のデータコピーを、2種類の異なるメディアで、1カ所は本番拠点と異なる遠隔地に保管する。この『3-2-1ルール』によって、データを確実に保護できるようにします。具体的には、まず業務システム内で物理環境や仮想環境などに分けて3つのデータコピーを作ります。次に、それらを1次バックアップとして、HDDや磁気テープなど2種類以上の異なるメディアに保存します。さらに2次バックアップとして、クラウドストレージへのデータ転送や、物理メディアの遠隔地保管をします」
素早い事業復旧を追求する場合、RTO(目標復旧時間)を短くし、RPO(目標復旧時点)を細かく設定することが望ましい。正サイトと副サイト(災害対策サイト)を構築するのは費用と手間がかかるものだが、近年は比較的安価なクラウドサービスが各社から提供されており、災害対策サイトの構築や、遠隔地バックアップサイト構築が以前よりもコストを抑えて実現しやすくなっている。
金岡氏は、コストと管理面で無理なく、確実に復旧できるバックアップ体制を整備する際に意識すべきポイントを3つ挙げる。「1つ目は、自社が遠隔地の拠点を持っているかどうかです。例えば大阪と東京に拠点があれば相互にデータをバックアップできますが、事業エリアが限られている企業が、わざわざ遠隔地バックアップのために拠点を用意するのは難しいでしょう。2つ目は、トータルコストの問題です。クラウドサービスへのバックアップは手軽に始められるメリットが大きいものの、『長期間、大量に』保管するとランニングコストが高額にならないかどうか、選定時に見極める必要があります。3つ目は、管理面の課題です。オンプレミスとクラウドのバックアップ環境で異なるインタフェースの管理ソフトウェアを使うことはよくありますが、緊急時に複雑な手順を実践するリスクは慎重に考えるべきです。こうした手間が、復旧時間に影響することもあります」
これらの課題をふまえてエフサステクノロジーズは、オールフラッシュストレージ製品「ETERNUS AX series」「ETERNUS AC series」と、SSDとHDDを搭載できるハイブリッドストレージ製品「ETERNUS HX series」に、新たなバックアップ機能「Cloud Backup」を提供する。
ETERNUS AX/AC/HX seriesは、SAN(Storage Area Network)とNAS(Network Attached Storage)の両方の用途で利用できるユニファイド型のストレージ製品だ。ストレージ専用OS「ONTAP」を採用し、スケールアウト型アーキテクチャを実現している。容量や性能の要求に応じてドライブ追加による容量拡張と、コントローラー追加による性能拡張のどちらも可能だ。クラウド連携機能も備えており、長期間にわたってアクセスのないデータや高速アクセスが求められないデータをクラウドストレージに自動的に退避できる。さらに、パブリッククラウドに展開した「Cloud Volumes ONTAP」(CVO)というサービスと連携することで、遠隔地からの災害復旧も可能になる。ただしCVOを利用した遠隔地バックアップの場合、クラウドサービスの利用料金を捻出しにくいという声もあるという。そうしたユーザー企業の要望に応えられる手段として登場したのが、Cloud Backupというわけだ。
Cloud Backupは、ETERNUS AX/AC/HX seriesに保存したデータのバックアップをパブリッククラウドベンダーのオブジェクトストレージに自動的に保存する機能だ。ユーザー企業が遠隔地拠点を持っていなくても、クラウドサービスをバックアップサイトとしてすぐに利用できる。
「Cloud Backupのキーワードは『小さく、お得に、簡単に』です。『データ保護の観点からデータを遠隔地にも置きたいが、遠隔地拠点を持っていない』『バックアップの保管先にクラウドサービスを使いたいが、費用は抑えたい』『運用管理の複雑化を避けたい』『ストレージ管理者とバックアップ管理者を分けたくない』など、ユーザー企業が抱えるさまざまな悩みを解消し、3-2-1ルールをスモールスタートできる手段としてお薦めできます」(金岡氏)
エフサステクノロジーズが提供する各種データ保護手法と比較しながら、Cloud Backupの強みを詳しく見ていこう。
Cloud Backupの保存先は、「Amazon Web Services」「Microsoft Azure」「Google Cloud」のオブジェクトストレージから選択できる。利用中のパブリッククラウドベンダーのストレージアカウントと連携させるだけで、ETERNUS AX/AC/HX seriesから直接クラウドにデータをバックアップできるようになる。この「小さく」手軽に始められる点が特徴の一つだ。
「お得に」という点では、CVOを使ってバックアップサイト(迅速なデータリカバリーが可能な災害対策サイト)を構築するのに比べると、クラウド基盤費用は約70%削減でき、トータルでも約30%のコストダウンが見込めるという。
バックアップの設定も「簡単に」、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)で直感的で分かりやすく一元管理できる。具体的な手順は、
という4ステップだ。バックアップは月次、週次、日次、時間指定などのスケジュール運用ができる。ボリューム単位でオブジェクトストレージにバックアップでき、リストアもボリュームまたはファイル単位で実行できる点も、管理者にとっては利便性が高いといえる。
Cloud Backupは、ONTAPがネイティブで提供する機能だ。エフサステクノロジーズがETERNUS AX/AC/HX seriesで提供するに当たっては、開発元のNetAppとの協業関係の下で技術検証をしており、中小規模のシステムから大規模システムまで高い信頼性の下で利用できることを確認している。
エフサステクノロジーズは、ITインフラ保守を中心に企業システムの安定稼働を支えてきた富士通エフサスと、サーバ、ストレージ、ネットワーク製品などを中心とした富士通のハードウェア事業部が統合し、2024年4月に誕生した企業だ。ハードウェアと関連サービスをトータルで提供できる強みを持ち、企業データや企業システムのバックアップについても、豊富な実績と幅広い知見・ノウハウを有している。
ユーザー企業に解決策を提案する際には、製品やサービスの長所と短所を踏まえて適材適所の使い分けを重視するという。川田氏はこう語る。「Cloud Backupによるクラウドバックアップ、CVOによるクラウドバックアップ、ETERNUS AX/AC/HX seriesを複数台用意するオンプレミスバックアップ、それぞれに長所、短所があります。手軽さやコストだけでなく、システムやデータの重要度、優先度によって、適切な手法を選ぶお手伝いをしたいと考えています。システム環境やニーズに応じた幅広い対策を用意できることが、エフサステクノロジーズの強みです」
金岡氏も「ETERNUS AX/AC/HX seriesに関しては、NetAppとの20年以上に及ぶ協業で培ってきたノウハウを持ち、お客さまに手厚いサポートを提供できます。お客さまが抱える課題に耳を傾け、メーカーやパートナーと情報を共有しながら解決策を提案していきます」と意気込みを見せる。
自然災害やサイバー攻撃への対応は今後ますます重要になる。エフサステクノロジーズのサポートの下、適材適所でのバックアップを実現し、事業継続性を高めていきたい。
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提供:エフサステクノロジーズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2025年6月24日